千葉きらめき総体前半戦レポート
平成17年8月5日
管理者:長野県高体連テニス部委員長 下岡隆志 管理者へe-mail
 千葉きらめき総体の組合せは、7月8日に発表になりました。さてどの学校が優勝するのか、皆さんも同じだと思いますが、自分なりに優勝候補を考えてみました。しかし、どうしても男女とも絶対的な優勝候補が見えてこないのです…。もちろん個人としてすぐれた実績や能力を持つ選手はいるのですが、チームとして、圧倒的な存在感を感じるチームが見つかりません。知人らに聞いてもやはり同様の意見で、「本命なき大会」と言った者もおりました。そうなると優勝の行方は、単なる競技力を超えて別の要素が勝敗を左右するかもしれない、そんな事も漠然と感じていました。

 8月1日、私は柏市に到着しました。柏市は、上野から常磐線で30分、人口38万人、東京のベッドタウンとして、急速な人口増加がみられる東葛飾地区中心都市の一つです。8月末には「つくばエクスプレス」の開通も予定されており、沿線を中心に近隣の町々を含めて、「更に住宅地がひろがるのでは」、とタクシーの運転手さんも話しておりました。「柏の葉公園」は市内最大の公園で、植物園、ボート乗りが楽しめる池、柏レイソルの試合が行われる県立柏の葉公園競技場をはじめ、芝生広場、コミュニティ体育館もあります。メイン会場のある「県立柏の葉公園庭球場」はその柏の葉公園競技場(スタジアム)に隣接しており、砂入り人工芝コート8面がセンター通路を挟んで配置され、観戦しやすい会場でした。「柏市柏の葉庭球場」は、ここから歩いて公園を抜け10分位、涼しげな池の奥に、やはり砂入り人工芝コート8面がセンター通路を挟んで配置されています。日影が少ないため、センターの通路兼観覧席にシートがかけられ日よけが設けられており、観客も応援団もその下に入るわけですが、やや狭い通路はぎっしり満席、そして両側のコートへ向かって一斉に応援や応援歌を歌うわけで、応援が共鳴し合い、なかなかの迫力でした。会場は、もう1箇所、柏の葉より無料のシャトルバスで20分くらいの「柏市富勢(とみせ)運動場庭球場」。ここは砂入り人工芝12面、立派な仮設スタンドも立てられ、大変応援しやすい会場でした。この大会に合わせて、人工芝も張り替えられたようで、見た目にもとてもきれいです。しかしやや芝が長いのか球足の遅めのコートで、選手に聞いてみると好き嫌いがわかれていました。

 団体戦は8月2日に、1、2R。3日に3R、準々決勝。4日に準決勝、決勝戦が行われました。この間ずっと好天に恵まれ、夕立なども一切なく、連日暑い日が続きました。春の全国選抜では4シード以外完全抽選になりますので、1回戦からいわゆる好カードが発生しますし、逆に勝ち上がりやすいセクションが生まれることもあります。しかし高校総体では、1〜16シードを配置しますので、出場校にとって最初の難関は2R。そこで勝ち上がるとベスト16、つまりこの段階で16シードに該当する学校と必ず対戦することになります。更にもう1勝、ベスト8は何と言っても全国上位8本ですから、常連校にとっては当たり前であっても、他の大多数の学校にとっては目標であり、憧れであるのです。胸を張って、郷土へ帰ることも出来ますしね。その憧れのベスト8ですが、「シードが崩れて荒れるのではないか」という一部予想に反して、男女とも8シードの内6校が順当に勝ち上がりました。男子では2回戦で、第1シードの東京学館浦安が、九州3位の鳳凰(鹿児島)に倒されるという波乱がありました。もちろん鳳凰は強豪校で力があったわけですが、学館浦安にしてみれば、地元開催で第1シードという目に見えないプレッシャーを背負い続けてここまで来てしまったのかもしれません。

 8月4日、この4日間の中で一番暑い日になりました。地元の方も「今年一番暑い」と言っていましたし、立っているだけでだらだら汗が背中を流れる、そんな天気となりました。男子準決勝は、ノーシードから勝ち上がった名古屋(愛知)と、苦しみながら勝ち上がってきた第4シード柳川(福岡)の名門校対決と、第2シード湘南工大附属(神奈川)と第3シード長尾谷(大阪)の対決となりました。会場が「柏市柏の葉庭球場」であったため、見ることが出来ませんでしたが、決勝へ勝ち上がって「県立柏の葉公園庭球場」へ乗り込んできたのは、シングル1・2を制した柳川と、ダブルスとシングルス2を制した長尾谷でした。三橋君(長尾谷)と杉田君(湘工)のエース対決を楽しみにしていた方も多かったのでは、と思いますが、第1セットタイブレークの後、第2セット序盤でダブルスとシングルス2が終了し打ち切りとなっています。
 女子の準決勝は、2試合とも接戦になりました。第1シード仁愛女子(福井)に挑んだのは、第5シード堀越(東京)でした。
 堀越高校は男女とも今大会、左肩に喪章をつけての出場となりました。実は、今大会の直前の7月30日に、男子堀越のNo1吉岡祐一選手が急死いたしました。所属クラブで練習後気分が悪くなり、病院へ運ばれましたが翌日息を引き取ったとのことで、本当に突然の知らせで、私たちもびっくりして言葉もありませんでした。改めてご冥福、お祈り申し上げます。
 そんな中で、各種掲示板などに日本のジュニアの大会の過密日程を批判する書き込みが書かれています。吉岡君の死因などはっきりしない現状の中推測でものを申すのも恐縮ですが、私自身も過密日程の中で吉岡君が頑張りすぎてしまったのではないか、と思っています。しかし、だからと言って、大会を減らす事や大会期間の延長など求めるのは、いささか方向が違っているように思えます。選手がどの方向をめざし、どの大会へエントリーするかは、選手自身の責任です。誰かに強制的に出場させられているわけではないのに、毎週のように大会に出場して休む間もない、そんなジュニアが多いのではないかと思います。大人である顧問や監督・コーチそして親は、選手の体調の把握を今まで以上に行わなくてはなりませんし、何より選手自身が自分の体調を管理できるような自立したプレーヤーになることが大切、そんなことを吉岡君が教えてくれたような気がします。
 さてこの準決勝ですが、壮絶な戦いになりました。仁愛最大の武器であるダブルスを、堀越の内藤さん・横田さんの1年生ペアがパワーと仁愛の逆をつく配球で2−0で下し、勝敗はシングルス2本にかかりました。S1の品田さん(仁愛)と望月さん(堀越)の対戦は、ものすごく長いストローク戦になりました。第1セットを5−7で取られた望月さん、第2セットを取り返すべく頑張ったのですが、2−3のあたりから少しずつ足を気にするようになりました。たぶんけいれんがきていたのだと思いますが、後のなくなった2−5のゲームで転倒、そのまま立ち上がれなくなりました。「痛い、痛い」と悲痛な声を上げる望月さんにドクターは試合続行不可能と判断し、コートの外へ運び出しました。ちょうど、隣りのコートでは、S2が佳境に入っていました。菅村さん(仁愛)と吉岡さん(堀越)の試合は流れが行きつ戻りつして、ファイナルセットも5−5、吉岡さん、望月さんの痛がる声を聞き、動揺もあったのだと思います。5−7で振り切られ、仁愛が決勝へ進出しました。もう一方の準決勝、共栄学園(東京)と長尾谷(大阪)の対戦も長い試合となりました。S1こそエース川村さん(共栄)が2−0で制したものの、ダブルスとS2はファイナルにもつれ込みました。ダブルスを長尾谷に取られて劣勢に回った共栄でしたが、S2前沢さんは第2セット4−3から一気に8ゲームを連取し、2−1で決勝へ駒を進めました。

 決勝戦は、午後1時10分から男女同時にそれぞれ3面展開で開始されました。気温はますます上昇し、日差しが刺すように感じられます。実は、準決勝の後、共栄学園のダブルスの選手も1名具合が悪くなり、医務室で処置を受けています。「決勝戦は技術を越えた体力・気力勝負になりそうですよ」、そんな話しを試合前知人としましたが、ドローを見たときに漠然と感じた「もう一つの要素」は、どうもこの灼熱の太陽だったようです。
 男子決勝は、3試合ともファーストセットを長尾谷が制し、長尾谷楽勝か、とも思いました。しかしここからが伝統校「柳川」の意地、安君・金君のダブルスはセカンドセットを6−1で奪い返すと、ファイナルセットも7−5で勝利。S2片山君もセカンドセット終盤まで競るものの6−4で奪うと、ファイナルセットは6−0。合計2−1で、2年連続23回目の優勝を飾りました。
 女子の決勝は、昨年の決勝戦の再現となりました。仁愛は昨年の雪辱を果たしたいところですが、データ的にはかなり不利。S1の品田さんは個人戦第7シード、対する共栄川村さんは、昨年のファイナリストで今大会第1シード。S2菅村さんは第13シード、対する共栄前澤さんは第3シードです。さて試合の方ですが、仁愛の有利が予想されたダブルスですが、共栄の河合さんの巻き込むように打つフォアのライジングに苦しみ、仁愛から6−3、3−6で五分のままファイナルへ突入しました。S1ですが、品田さん予想外(失礼)に健闘するも、ファーストセットを4−6で落としました。しかしセカンドセット粘る品田さんに、川村さんも決めに行く球にミスが出て、6−4と品田さんが取り返しました。S2は、菅村さんがファーストセットを6−4で取ると、セカンドセットも5−2。ところがここから菅村さんが取りきれません。苦しそうな表情を浮かべながら、時にネットを取ってまでゲームを取りに行くのですが、粘る前澤さんに追い上げられ、ついに前澤さん5ゲーム連取で、第2セットを奪い返し、試合はファイナルへ突入しました。3試合ともファイナルに入ったこの時点で、私は帰郷のため会場を後にしました。結果は、電話で教えて頂きました。ダブルスがファイナル6−1で仁愛。そして優勝を決めたのは、何とS1の品田さんでした。ファイナル6−4で勝利。その時点で、S2菅村さんはファイナル3−1だったようですが、合計2−0で、仁愛女子高校昨年の雪辱を果たすとともに、何と春夏連続の高校テニス頂点へ登る、初優勝でした。
 一つわからないこと、仁愛の吉田監督は私がコートを離れるまで、ずーっとS1品田さんのベンチに入っていました。素人考えでは、ダブルスとS2勝負だと思ったのですが、ダブルスが追い込まれているときも、S2がマッチゲームから5連続ゲームを奪われたときも、スコアボードこそ目をやっていましたが、ベンチを動きませんでした。そこら辺もまたお伺いしてみたいところでした。

 さて、団体戦を終えて誰もが気づいた点、それはどの審判も、ものすごく大きな声で自信を持ってジャッジしている事!。これは、いままで私が見てきたインターハイでは傑出していました。年々審判の技術も向上していますし、審判補助員の生徒も指導の先生方も、本当に一生懸命取り組んできた成果だと思います。
本日から、個人戦が始まっています。過酷な日程と灼熱の太陽の下、選手の皆さんも補助員の皆さんも体調管理に十分気をつけて、力一杯頑張って下さい。結果を楽しみにしています。

 (文責:管理者 下岡隆志)