「間合い」の悪い選手達へ
平成16年9月27日
管理者:長野県高体連テニス部委員長 下岡隆志 管理者へe-mail
 大相撲、最近人気が低迷しているようです。その原因についていろいろ論じられていますが、私なら、まず「立ち合いの緊迫感のなさ」を、その1番に挙げます。「制限時間」って、「その時間までに立て」という意味だと思いますが、力士の方も時間前に立とうなどとは思ってもいないようで、制限時間にあわせてつまらないパフォーマンスを繰りかえしていますし、観客の側も当然そういうものとして時間までは気を抜いて休憩しています。何というか「一瞬も目が離せない」緊迫感がないんですよね。
 競技者にとって、競技に入る「決断」って、なかなかつき難いようです。そういえば、何年か前、かつて「神の子」と呼ばれたゴルフのセルヒオ・ガルシアが、ティーショットをなかなか打てず、ワッグルを延々と繰り返していた時期がありました。あまりに痛々しく、一方で滑稽で、気の毒でなりませんでした。テニスのプロでそういうケースはあまり見かけませんが、アマチュアには「間合い」の悪い選手は多く存在します。
 高校生の中で、特に女子選手に圧倒的に多いのですが、ポイント間20秒を毎回目一杯使う選手がいます。相手選手がレシーブ体勢に入っているのに、ぶつぶつ呟きながらストリングスを直し続け、なかなかサービスを打たない、逆に相手がサービス体勢に入ろうとしているのに、いつまでも背を向け続けている、そんな選手です。決して意図を持って相手のペースを攪乱しようとしているのではなく、まったく悪いリズム、悪い間合いが身についてしまった選手達です。また、ダブルスでは、やはり女子に圧倒的に多いのですが、相手方が構えて待っているのにお構いなく、毎ポイントごと手を握りあって延々と話し合っている、そんなペアも良く目にします。こういう選手達を、運営側は実はとても嫌がっています。「あの選手が入ったから、試合長いよ」とひそひそ言われていますし、相手選手にも嫌われてしまいます。「あの子とやりたくない、ペースが狂ってしまう」、と。何とかその選手達の為にも「適切な注意をしてやりたい」と思いながら、そういう選手に限って真面目でひたむきな選手が多く、「傷つけてしまうのではないか」とためらってしまったりしていました。

 何か良い方法はないかと思っていた折、テニスマガジン9月号に、『[夏休み特別企画A]テニスプレーヤーのためのルール&マナー集、知ってた!?これは明らかなルール違反! 解説=姫井義也氏(日本テニス協会・国内大会委員会委員長・兼ルール部会長)』というコラムを見つけました。良く起こりがちなルール違反を6つのケースで説明しているのですが、その内2点については、私自身、目からウロコでしたし、上記の問題を見事解決していますので、以下に引用紹介致します(9/27引用許可取得済み。テニスマガジン誌に確認したところ、「あえて全国総体の前にこのコラムを企画しました。大会が終わってから指摘することは可能ですが、今回は大会前にやろうと、それが少しでも実績に反映されればいいと思い取り組みました。」との事)

●ルール違反:ゲームを遅らせる行為
 試合開始から終了まで、無用な中断なく「連続的にプレーせよ」という規則により、「20秒ルール」「90秒ルール」[120 秒ルール」というルールが定められています。 【→『コートの友04年版』47頁・(規則29)連続的プレー】
 「90秒」は各セット第3ゲーム以降のエンドの交代時にとる休憩の制限時間、「120秒」はセット終了時にとる休憩の制限時間で、このふたつの休憩は選手が堂々ととることのできる、ルールで許された「権利」です。従って、休憩のたびに、主審が「タイム」(「90 秒ルール」では60 秒たったとき、「120秒ルール」では90 秒たったとき)とアナウンスして、休憩時間が30秒後に終わるよ、ということを選手に告げてくれます。
 「20秒」は、ひとつのポイントが終わったら、次のポイントは20秒以内に始めなければならないというルールですが、先の「90 秒」「120秒」と根本的に違う点は、この「20秒」は単なる「 中断」であって、「休憩時間」すなわち「選手の権利」ではないということです。この中断は、例えば、ほどけたシューズの紐を結び直したり、長いラリーだったために弾んだ息を整えたり、どうしようもない喉の渇きを癒したり、汗を拭いたり、ということのために設けられたものなのです。といっても、もちろん、これらはポイントが終わるたびに行うことは許されません。
 従って、ポイントごとに、上記の行動も含めて、意識的に休憩をとろうとしたり、ダブルスでポイントごとにパートナー同士がひそひそ話をしたり、というような行為は違法で、ソフトウオーニングのあと罰則(コードバイオレーション)が科せられることになります。
 【→『同』39 頁・[規則21]サーバーとレシーバーの義務】


 如何でしたか。各校の監督も選手も(実は私自身も)、ポイント間20秒を選手の「権利」と勘違いしていませんでしたか?今後は、私も「間合いの長い」選手に「その選手の為」にも、きちんと注意を与えていきたいと思っています。
 また、2点目ですが、ダブルスのサービス時におけるレシーバーの動作で、昨年まではやはり有効に注意しにくかった行為について、本年から以下のようになりました。

●ルール違反:(最新ルール)ダブルスの前衛がサービスコート内をうろうろする挑発的な態度
 サーバーがサービスをしようとしているとき、レシーバーのパートナーがネット際で(しかも、ときにはセンター・サービスラインをまたいだりして)サーバー側を挑発するような動きをするという、見苦しいことこの上ない光景をときどき見かけます。この行為については、今年から、明らかに「故意に(やってやろうという意思をもって)」やっていると主審(セルフジャッジの試合のときはロービングアンパイア)に判断されたときは、テ二ス規則〔規則26〕[妨害」の違反として、罰則が科せられるようになりました。
 ただし、実際には、その行為がよほど悪質なものでない限り、いきなり罰則が科せられるというのではなく、主審から注意があったあと(これをソフトウオーニングと言います)、ふたたびやったら罰せられるというのが普通です。
 【→『 44頁・(規則26)妨害のケース(5)】


 テニスって、限りなく「意地の悪い」競技ですよね。常に相手の逆を取り、相手の嫌がるプレーをし、相手が弱気になればかさにかかって潰しにかかる、それも一発で決着がつかないので、延々とそれをやり続ける。そんな競技だからこそ、ルールの遵守、気品あるマナー、相手への尊敬、が必要になります。

 プレーヤーの皆さん、
 対戦相手はあなたに尊敬と友情の念を抱いてくれますか?
 観客は敵方も味方側も、あなたに惜しみない賞賛の拍手を送ってくれますか?

 9月27日11:00am 文責 下岡隆志