雑感:中国04総体を終えて
平成16年8月9日
管理者:長野県高体連テニス部委員長 下岡隆志 管理者へe-mail
 8月7日の夜、日本対中国のアジアカップサッカー決勝戦が北京で行われ、皆さんもテレビで見ていたのではないかと思います。平均視聴率が関東で32.4%(関西は27.0%)、瞬間最高視聴率は試合終了直後、選手らの喜びの表情を放映した時点で、関東45.8%(関西40.1%)に上ったようです。試合中、中国の大声援と日本に対する大ブーイングに審判も飲まれたのか、日本に対するファウルをなかなか取ってくれず、テレビの前でやきもきした方も多かったのではないでしょうか。しかし、試合が終わって意外なコメントが中国のハーン監督から出てきました。「1点目のFKはわれわれに与えられるべきもの。2点目はまるでハンドボールで、3点目はMF孫維海へのファウルの後だった」と日本の全ゴールに文句をつけ、準優勝のメダルの受け取りを拒否した、と言うのです。
 これはまさに「審判」と言う事の本質を象徴するようで、おもしろく感じました。「事実」は1つしかないのだけれど、見る側は常に自分の側から試合を見ようとします。テニスの試合でもよくありますよね。きわどいコースにボールが飛び、「おっ、アウト?イン?」と思った瞬間、審判はインのハンドシグナル、ラリーが続きポイントを落とした瞬間、応援席からは、「絶対アウトだった」、「審判何見ているんだ、アウトだよ」の声。そして、試合が終わると、「ひどい審判のせいで負けてしまった」、「あのミスジャッジで流れが変わった」、「1メートルもオーバーしていた。(逃がした魚と一緒で、時間とともに巨大化している!)」。今回の中国04総体でも、それに類する場面にいくつか出くわしましたが、私の見る限り審判のジャッジは正しかったように思えました。なかなか、審判は大変です。応援の皆さん、監督の皆さん、もっと冷静に!と言いたい場面は多々見受けられます。

 今回私は大会初日から4日間、試合を見ました。その限りでは、審判をめぐる大きなトラブルはなく、審判係の生徒諸君は非常に立派に審判を務めていたように思えました。4人審判で、それぞれのライン分担も明確で、ハンドシグナル、コールも全員がはっきりしていました。相当に練習を積んで、本番に臨んだのでしょう。指導された先生方、ご苦労様でした。そして、何よりも374人の審判係の皆さん、本当にご苦労さまでした。またそれ以外にも308人の補助員の皆さんがいろいろな仕事を分担してくれました。さらに会場内には、清掃ボランティアのおばあさん方も多くいらっしゃいました。こういう人たちに支えられてテニスをさせて頂いている感謝の気持ちを、選手たちは忘れてはいけないと思います。

  さて、結果の中からですが、女子では何と言っても田中真梨さん(共栄学園)の3冠王が輝いています。真夏のインターハイは、気温が高く過酷であることに加え日程がきつく(特にシングルス初日は8ゲーム4本、個人戦3日目はシングルスQF、SFとダブルスSF、すべて3セット)、さらに全体のレベルが上がる中、3冠は以前にも増して出にくくなっています。前回女子の3冠王は、平成8年の甲府総体の小畑沙織さん(富士見丘)で、以来8年ぶりの快挙でした。ちなみにそれ以前はと言うと、平成7年鳥取総体の井上青香さん(浦添)、その前は16年前の伊達公子さん(園田学園)まで遡ります。田中さんは全選手の中、もっとも多い試合を戦ったわけであり、心技体の充実ぶりを感じました。

 男子では、柳川高校に王者としての貫禄を見ました。「ぽっと出」のチームには観客は寛容なのですが、常勝チームには常に厳しい目が向けられます。技量に対してはもちろん、試合態度、立ち居振る舞い、応援態度、等々に及びます。なぜならば常勝チームは、全国12万人のテニス部員の憧れであり、目標であるからです。今回の男子柳川の落ち着いた堂々とした試合態度、たぶん男子で1番の大応援など、風格すら感じました。3年最後の年となった吉備君、小山君の、シングルスでの頑張りも光っていました。

 「1年がすごい」という声が、会場内そこここでささやかれていました。男子シングルスベスト8に入ったのは、3年生4人、2年生1人、1年生3人。さて本当に1年生が台頭しているのかと、昨年の長崎総体団体戦の選手名簿と比較をしてみました。団体戦は男女各51校、1チーム5人ですので、登録計は男女各255人です。そのうち1年生は、男子の昨年が27人(13%)、それに対し今年はなんと45人(18%)、女子はそれ程でもないだろう、と思っていたらとんでもない、昨年が42人(17%)、今年は何と57人(22%)でした。こりゃあ2年生、うかうかしていられませんね。

 8月9日3:30pm 文責 下岡隆志