中国04総体前半戦レポート
平成16年8月4日
管理者:長野県高体連テニス部委員長 下岡隆志 管理者へe-mail
 本年も8月2日に全国高等学校総合体育大会(インターハイ)テニス競技会が、岡山県備前市で開会しました。前日までゆっくりと西進し大きな被害を出した台風10号の影響で、激しい雨と風が続いたようで、天候が心配されましたが、2日の開会前には雨も上がり絶好の大会日和となりました。大会名称は「中国04総体」。島根県を中心開催県とし、他中国4県にも分散して各種目の大会が開催されます。岡山県は、テニスの他、倉敷市でレスリング、牛窓町でヨットが開催されています。テニスの会場は、備前市。皆さんもよく御存知の1千年の歴史を誇る備前焼の故郷です。備前焼は、瀬戸・常滑・丹波立杭・信楽・越前とともに中世六古窯の一つに数えられ、釉薬を一切使わず、実用に徹したその美しさに特徴があると言われています。会場となった備前市総合運動公園は、温水プール、市民体育館、多目的競技場などを併せ持つ立派な施設で、テニスコートは、観覧スタンドを持つセンターコート1面の他、南サブコート12面、道を挟んで上段に北サブコート14面の、砂入り人工芝コートを擁し、男女同一会場で大会が開催できる立派な施設です。周りには山と海、人家や店などは全くなく、南サブコートは、なんと海(湾)まで15メートルで、観戦に疲れたら海をぼんやりと眺めて休憩することも出来ます。

 8月2日、コート上での開始宣言に続いて、応援の声が響き渡り団体戦が一斉に始まりました。本日は1〜2回戦、1面進行で8ゲームズプロセットです。本日のハイライトは、何と言っても男子2回戦で激突した、第1シード柳川(福岡)対清風(大阪)の対戦です。この試合が1番コート、さらにとなりの2番コートには、昨年の覇者名古屋(愛知)と長尾谷(大阪)が入ったために、このコートの周辺、また隣接するセンターコートの最上段にも鈴なりの観客が集まりました。柳川対清風のダブルスの序盤の激しい打ち合いは観る者を魅了しましたし、個人戦シングルス第2シード井藤君(清風)の高速サーブを第1シード吉備君(柳川)がしっかり受け止め打ち合う姿には、皆息を飲みました。

 8月3日は、3回戦と準々決勝で、準々決勝から3セットマッチとなります。本日も天気は曇り、時々晴れ。インターハイ独特の猛烈な暑さはなく、風もあまり強くなく選手にとっては大変良いコンディションとなりました。そのせいもあってかシードが大きく崩れることもなく、男子は、8シード中4校がベスト8に勝ち上がりました。シード以外からは、東海大菅生(東京)、地元期待の関西(岡山)、龍谷(佐賀)、富山国際大学付属(富山)が入りました。女子では、8シード中6校がシード校で、他2校は、秀明英光(埼玉)と松商学園(長野)でした。

 8月4日は、曇りのち晴れ。蒸し暑さはありますが、ぎらぎら太陽が照ることもなく、本日も大会日和です。本日は、準決勝と決勝。3面同時展開の、3セットマッチです。男子トップハーフからは、第1シード柳川が、第4シードの藤沢翔陵(神奈川)を、DとS1が先勝し2−0で決勝へ。ボトムハーフからは第2シード湘南工大附属(神奈川)がノーシード龍谷を、DとS1の先勝により2−0で決勝へ進出しました。
 湘南工大附のS1杉田君、S2会田君は、ともにまだ1年生!。S2は小山君(柳川)が第1セットの接戦を6−4で制し、そのまま会田君(翔工)振り切り第2セット6−0。S1では吉備君(柳川)が第1セットを6−3で取ったものの第2セットは大接戦。5−4吉備君のインターハイポイントを杉田君(翔工)が3回?4回?と雄叫びを上げながらしのぎ、一時は何と6−5と逆転。しかし吉備君の逆襲でタイブレークを奪われ、柳川の優勝が決まりました。その時点で、ダブルスは大接戦、呉君・安君(柳川)と小野君・池野君(翔工)は序盤からどちらも譲らず、好プレーの連続。第1セットをタイブレークで制した柳川、しかし第2セットは、3−4、この時点でシングルが2本終了し柳川の優勝が決まっていますが、今決勝には打ち切りはなく、第2セット翔工が取り返し、ファイナルセットまでもつれた接戦は、最後柳川が制し、3−0でした。
 今大会の男子の試合を観て感じたことですが、決勝の2チームだけでなく、非常に多くの選手がストロークでもサーブでもボールを強くたたき、激しくうちあうようになったように思え、全体的にかなりレベルアップしてきたことを感じました。

 女子のトップハーフからは、第1シード夙川学園(兵庫)をS1、S2の2−0で下した第5シード共栄学園(東京)が、決勝へ。ボトムハーフからは、第7シード金城学園(愛知)をDとS2で2−1で下した第3シード仁愛女子(福井)が、進出しました。テニスマガジン誌9月号に「中国インターハイ全出場校写真付名鑑」という特集があり、そこには各校のプロフィールや目標が載っている訳ですが、共栄学園の目標は、なんと「仁愛のロブに勝つ」。何とも奇妙な目標ですが、昨年のインターハイ、本年の選抜と準々決勝・準決勝で仁愛に阻まれた共栄、さてその執念はどうなったのでしょうか?
 準決勝仁愛−金城戦のS2が長い死闘となったため、女子の決勝は男子から1時間遅れで始まりました。S1田中さん(共栄)はシングルス第1シード、田中さんの強打に必死に対抗する菅村さん(仁愛)でしたが、さすがに強い田中さん、6−1、6−1で先勝しました。しかし仁愛にとってはこの展開は覚悟の上、巧みなロブと戦術と走力で不敗を誇るダブルスと、全国選抜決勝戦でS1であった川内さんが、北信越大会個人戦の結果でS2に回っている事、ここからが勝負でした。しかし、共栄もNo2の川村さんをダブルスに配し、対抗。そのダブルスは、共栄の川村さん・前沢さん、仁愛の恒松さん・山形さん、互いの持ち味を生かし序盤4−4と大接戦、しかしそこから2ゲーム連取の共栄が第1セットを奪いました。第2セットも4−4と大接戦、しかしその時点で、S2の川内さん(仁愛)が木川さん(共栄)に敗れ、勝敗は決しました。木川さん、第1セットの3−5の劣勢から4ゲーム連取で第1セットを川内さんから奪うと、第2セットもその勢いのまま6−1で勝利でした。接戦となったダブルスも、その後第2セットを仁愛が取り返したものの、第3セットで敗れ、共栄が3−0で初優勝を飾りました。
 女子の準々決勝で、エース高尾さんの負傷棄権もあって金城学園に苦杯をなめた第2シード渋谷幕張(千葉)でしたが、別の意味で大きな話題を集めました。そのウェアが、かっこいいのです。高体連では、ウェアに関しては襟付きのシャツか、ワンピース(襟がなくても可)と規定しています。今までもワンピース着用のチームはあったわけですが、今回の渋谷幕張のウェアは、ワンピースで上はノースリーブでタンクトップに近いデザインのもの、ウィンブルドンでシャラポアが着用したものに近いと言えばおわかり頂けるでしょうか。たしかに華やかでかっこ良いのですが、誰にも着れると言うわけではなく、今後流行するかどうかは不明ですが、高校テニスも新しい時代に入りつつあると言うことでしょうか?

 さて、8月1日に大雨警報の中、備前市がテニス競技の開会式を全選手を集めて市民センターで開いてくださいました。後の懇親会で、栗山市長さんが、あえて苦言を一言、と言うことで、選手のごく一部ですが椅子を倒して寝ている者や私語をしている者がいて残念、というお話をしてくださいました。トップの大会にはセレモニーはつきもの、セレモニーも含めて全国12万人のテニス部員の見本となるような態度でなければいけないと思います。
 その他に市長さんはこんな話しもしてくれました。テニス会場のいたる所を飾っている黄色のマリーゴールドと赤いサルビアのプランター、これは「友情の花の種」と言って昨年長崎の会場を飾っていた花の種を、高校生が採り岡山に送って高校生が育て移植したものです。なんとこの種は27年間、インターハイ会場から次の会場へと受け継がれているもので、その発祥はこの地、岡山で昭和52年に開かれた岡山インターハイだそうです。つまり27年ぶりの里帰りなのです。他の競技でも行われていたらしいのですが、現在受け継がれているのはテニス競技だけのようです。明日から個人戦が始まりますが、ぜひサルビアとマリーゴールドを、会場に行かれましたらご覧下さい。
 私は明日で帰郷しますので最後まで観られませんが、個人戦での選手の皆さんのご健闘をお祈りいたします。

 8月4日9:00pm 文責 下岡隆志