高知県発!競技マナーについての提言
平成16年6月22日
管理者:長野県高体連テニス部委員長 下岡隆志 管理者へe-mail
元高知県テニス部専門委員長で現高知県テニス協会副理事長(兼ジュニア委員長)の高芝純明氏(高知商業高校)より、ジュニア選手の試合に臨む心がけについての資料を頂きましたので、以下紹介します。この文章は、高知県内のジュニア関係者に送られたものですが、全国の皆さんにも是非見て頂きたいと思い、氏の承認を頂き転載致しました。なお高芝先生は、全国教職員テニス大会も主管して下さっています。

2004年6月11日
     「ジュニアの試合マナー」について  高知県テニス協会 ジュニア委員長 高芝 純明

 最近のジュニアの試合を見ていて、非常に気がかりなことがあります。多くの方が気になっていると思われますが、試合に対する選手の心構えや態度です。大きな声を出すのは自分に気合を入れるため一定許容範囲であると思いますが、「こいやー」あるいは「こいやー、こら」とガッツポーズをして相手を見据えネットに向かっていく姿には、嫌悪感を抱きます。これは明らかに悪意をもって行っている行為で、ケンカをふっかけている言葉や行為そのものです。言われた相手がもし、「なんなーやるか」と応酬したらどうなるでしょうか。先日の県体の時、そのような場面に出くわし、試合を止め注意しました。まさにののしりあいです。私は自分もテニスの試合に出ますので、試合におけるお互いの態度が非常に重要であると思っています。試合マナーがいい選手と対戦した時は、勝っても負けてもすがすがしい気分になれます。一方、試合マナーの悪い選手と対戦して、集中力を乱されたりすると後味が悪い思いをします。それは、試合を見ている観客も同様の感を擁くことでしょう。
 テニスは近年セルフジャッジが多くなってきました。これはお互いの信頼感をベースに作られたルールです。他の競技では考えられません。テニスのマナーを重んじる長い伝統が、このルールを支えています。もし、お互いの信頼感がなくなれば、このようなスタイルはできなくなります。
 翻って、先のジュニアの試合態度は大きな問題を孕んでいます。大声で、「こいやー」と言われたら一般の大人は、我慢できないでしょう。大人にできないことは、高校生にもできないはずです。それが、昨今ジュニアの大会で多く見られるようになったのは、全国や四国での影響があると思います。強い?選手のそのような姿をみて真似をする。相手もやるから自分もやる。このような悪循環が続いています。彼らはテニスの技術も精神面も未熟で、それを隠すため、あるいは相手の集中力を乱すため、といったスポーツマン精神に反した行為を行っています。
 こんな相手と試合をして、試合後の充実感があるでしょうか?自分の実力は十分出せたと思えるでしょう?試合をして「ありがとうございました。勉強になりました。また、お願いします」と言えるでしょうか?あるいは言ってもらえるでしょうか?周りで応援している人に感動を与えることができるでしょうか?「どんな球も諦めず拾うひた向きなプレー」、「勇気をもって攻める姿勢」、「相手によってよく考えた戦術」、「そしてなによりも正々堂々としたプレー」などによってのみ観客は感動し、惜しみない拍手がプレーヤー与えられます。
 テニス人口はジュニアも一般もどんどん増加し、高校生は全国で12万人以上の高校生がテニス部に入部しています。この数字は、サッカー、バスケットボールについで第3番目の数です。部員は多くなりましたが、現状のような試合では、「人に見てもらえるスポーツ」になり得ません。子どもたちは、大人への成長の途中ですので、漫画やアニメ、テレビなど多くのメディアの影響をうけ、ややもすれば青年期特有の誤った価値観や行動をとることがあると思います。そこに、顧問や指導者・保護者の果たすべき役割があります。生徒が誤った認識で、このような行為を行っている責任は大人にあります。指導者・保護者・顧問などが生徒に正しい情報・ルール・マナーを教え育てることが必要です。
昨年からIHでテニス団体戦の女子決勝がNHKでテレビ中継されました。テニスが多くの人に見てもらえ、感動を与えるスポーツになるために、我々大人が、勝負至上主義ではなく、スポーツの本質、テニスの本質を見据えた指導(こころを育てる指導)を粘り強く行うことが望まれます。大リーグの選手は決してガッツポーズやはでなパフォーマンスはしません。テニス競技が真にメジャーなスポーツになれるか、今が踏ん張り時ではないでしょうか。

 テニスの試合にドラマを!感動を!
◎ 追記
 試合中の声について、どこで線引きしたらいいかわからないという声をよく聞きます。私の私見ですが、自分が対戦していると置き換えて不快感を感じるような声やしぐさはダメだと思います。また、作戦として相手の集中力を乱すような意図のある行動や言葉は「スポーツマンシップ」に反する行為としてコードバイオレーションの対象と考えます。掛け声は、自分や自分のペアを励ます意味で出すもので、決して相手に精神的ダメージを与えるためにだすものではありません。テニスのルールブックに、「ダブルフォールトには温かい沈黙を」ということが書かれています。フェアープレー精神とはこのようなことをさしています。ラグビーでも選手が負傷した時など、ボールをわざと外に出して試合を中断します。
 6月13日(日)に高知県テニス協会・女子連共催の審判講習会があり、松野えるだ氏のお話を聞きました。そのお話を聞きながら、別紙のような資料をまとめました。今後、高体連・中体連の顧問の先生の学習会を実施しながら、意思統一を図り、生徒の誤った認識を変えていく必要があると思います。また、顧問向け・生徒向けのルールブックダイジェスト版を作成し、テニス協会総覧に掲載することも必要と考えます。全国大会や四国大会で厳しい指導をすれば、早く進むと思いますが、現状を見過ごすわけにはいきません。地方から声をあげ、四国・全国に広げていきましょう。ただし、あくまでも生徒を育てる指導として行って行きましょう。

2004年6月14日
      ジュニアの試合でのよくある問題      高知県テニス協会 ジュニア委員長 高芝 純明

◎ 倫理規定に関する違反行為

@相手に向かって大声で威圧する行為
 ・「カモン」「こいやー」「こいや こらー」など喧嘩ごしの言葉をポイントごとに何度も繰り返し浴びせる行為
A試合相手への暴言
 ・「ほんとにアウト?」「どこにボールが落ちた?」などジャッジに関するクレーム
 ・「しばくぞ」「殺すぞ」などと独り言を言う
B用具への乱用
 ・「ラケットを高く投げ上げる」「地面にたたきつける」「ボール蹴飛ばす」「その他の備品や用具への乱暴な行為」
C服装・用具
 ・「試合にTシャツで出場する」
 ・「表彰式にTシャツ、サンダル、首タオルなどで出る」
 ・「服装についているロゴの違反」(高体連ルールあり)
 ・「ラケットのストリングロゴ違反」(高体連ルール)
 ・「タオルをコートの後ろに放り投げておき、ポイントごとに汗を拭きに行く」(遅延行為)
D試合進行
 ・「試合のあるコートに入るのが遅い」
 ・「入ってから着替えをする、靴紐を止めるなど」
 ・「試合場をかってに離れる」
 ・「試合に入らずかってに帰る」
Eセルフジャッジに関する問題
 ・「ジャッジがはっきりしない」
 ・「ジャッジが手だけで声がない」
 ・「ミスジャッジが多い」
 ・「サーブ前にカウントを言わない」
 ・「外の観客に、ジャジやカウントを聞く」
 ・「カウントやスコアがわからなくなる」
F競技中の問題
 ・「ベストをつくさない」
 ・「ダブルスでポイントごとに長話をする」(試合の遅延行為)
 ・「相手ときちんと握手や礼をしない」「審判にお礼をしない」
 ・「相手のショットが決まったとき、馬鹿にしたように拍手の真似をする」
 ・「相手が打つ時、わざと声を出す」
 ・「相手がサーブを打つときに動き回って集中力を乱すようしむける」
 ・「スコアーカード」をめくらない
 ・「シングルススティックを立て忘れる」「のけ忘れる」
 ・「シングルススティックの立てる場所が違う」
 ・「センターストラップの高さが違う」
 ・「試合相手を確認せず、間違った相手と試合をする」
 ・「暑いとき、エンドチェンジでの休憩を故意に長く休む」
Gコーチング
 ・観客やコーチが、個人戦なのに外から声やしぐさで合図を送る
 ・団体戦において監督がエンドチェンジ以外の時にコーチングをおこなう
 ※「もう一本」「ナイスショット」「集中」や拍手ぐらいは慣例的に認められているが、いつまでもしつこく拍手することは相手の集中力を乱す目的であり認められない

 上記の倫理規定に反した場合、ポイントペナルティー制度による罰則(タイム・バイオレーション、コード・バイオレーション)を受ける。違反がひどい場合は本人およびそのチームが失格となる場合もある。