学校スポーツの限界?顧問の苦悩
平成15年2月28日 管理者
 20年以上テニス部顧問をされてきた先生が、飲み会の時決まってこんな話をします。「皆んな、同じなんだよ。俺だってどのくらい女房が泣くのにテニスコートに出て行った事か。出張だとか、仕事だとか言って、そのままコートに向かうこともしょっちゅうだったよ」。思わず身につまされる話しですが、企業に勤めていれば休日出勤も珍しくはありません。「学校だって、同じじゃないか」と思われるかもしれませんが、そこにはちょっと違った事情も存在します。以下、実際のデータは長野県の公立高校の例でお話ししましょう。
 
 新学期が始まると、新しい体制、新しいクラス、新しい授業で、学校は最も忙しい時期を迎えます。加えて運動部顧問にとっては、高校総体(インターハイ)予選を控え、こちらも重要な時期となります。3年生は最後の大会となりますので、選手も必死です。「先生!7時半まで毎日練習します。よろしくお願いします」、「…おお、そうか。よし、わかった。」かくして多くの先生が5時15分で帰宅する中、運動部顧問は残って、指導です。「会社では超過勤務は当たり前、超勤手当だって出るじゃないか。」とお思いでしょうが、私たちは平日何時間指導しても、手当はゼロ。ただ働きなのです。
 やっと休めると思った土・日。しかし、土日こそが重要。試合慣れしなければなりませんので、練習試合や遠征もかかせません。かくて、4月5月は休みが1日もなくなります。休日出勤の手当は、1700円です。間違ってはいけません。これは時給ではありません。何と、日給(8時間以上無制限)なのです!

 新学期になって運動部の顧問が代わると、よくこんな話題がそこここで交わされます。「今度の先生、全然部活みてくれないねえ。前の先生は、熱心だったのに…」。その熱心な先生を支えている状況は、上に書いたとおりなのです。更に、自分でバスを買って遠征を繰り返す先生、ご自宅に生徒を合宿させる先生、もうこうなると、ただただ頭が下がるばかりです。
 私たちの本務は授業にありますから、当然他の先生方と同じく授業の準備に取り組まなければなりません。校務も平等に分担されますので、それも手が抜けません。部活指導には、それ以外のプライベートな時間が当てられるわけです。教員には、一律4%の教職調整額が給料に付加されます。しかし、それは教員全員に与えられるものであり、会議や授業準備等で定刻を回る場合の埋め合わせにすぎず、膨大な運動部顧問の超勤を補えるものでは、到底ありません。
 
 少子化や、運動部を敬遠する風潮から、生徒の運動部離れが危惧されていますが、顧問の運動部離れが見えないところで進行しているように思います。
 週休2日制になり生徒に余裕ができたはずですが、授業数減少による生徒の学力低下などという(へんてこな)理屈がまかり通り、非常に多くの高校で土曜日に補習が導入されるようになっています。教員を取り巻く情勢も、かつてとは比べものにならないほど、厳しいものになりつつあります。

 でも、私たちは、テニスを、部活指導を続けているわけで、次回は「なぜ、部活指導を続けるのか」について、書きたいと思います。しかし、私などいい加減な顧問で、そんな事書く資格ない気もします。これを読まれる皆さんの中には、様々な苦労をされている先生方もおられると思います。実績(選手の)などは関係ありませんので、ぜひどんどんご意見をメールでお寄せ頂いて、紹介できれば、と思っています。